今日から魔法使い(序章)

「はぁ・・・・ついに30歳か。」
もう少しで日付も変わろうかという時刻。
1LDKの狭いアパートの一室で、間藤 一(マドウ ハジメ)は一人つぶやく。

顔は特に悪いわけでもなく、太っているわけでもない。
特に趣味と言う趣味もなく、職場と部屋を往復するだけの日々。
ただ、ひたすらに出会いのない人生だった。
女の子とまともに話した事もないこの男は、もちろん夜のお店に足を運ぶほどの勇気もなかった。
気が付けば彼女居ない歴(=年齢)30年を迎えようとしている。
そしてもちろん名誉ある童貞である。

デジタル時計の表示が00:00に切り替わった。
世間一般では30歳まで童貞で魔法使いになれるなんて言われているが、んなわきゃ~ない。
エロ動画でも見てすっきりしてから寝ようかとPCで今晩のおかずを捜索中であったが、急にモニターに幾何学模様の様なものが浮かび上がった。
それはまばゆい光を放ち始め、あまりの眩しさについには目を開けていられなくなった。

数秒だろうか、数分だろうか。徐々に光が収まり視界が戻ってくる。
すると目の前のモニターからまさに魔女っ子といった服装のかわいい女の子が飛び出してきたのだ。
「パンパカパーン!! あなたは全世界30歳童貞の中から厳正な抽選の結果、魔法使いに選ばれました!! おめでとうございます!!!」
「・・・。」
俺は突然の事に声も出せずにポカンとすることしか出来なかった。
まぁ、もともと女の子とまともに話せるメンタルなど持ち合わせていなかったのだが。

「それではここに受け取りのサインをお願いしますね。」
そこで俺は思考停止したまま思わずサインをしてしまったのだ。

「おっと、申し遅れました。私は新人魔法使いのサポート担当のキノと言います。
分からない事が有ったら何でも聞いてくださいね。
こちらが魔法デバイスのマジカロイド端末と取扱い説明書になります。
マジカルプレイにアクセスして使いたい魔法を端末にインストールしたら使える様になります。
魔法はスピリチュアルポイント(略してSP)と交換になります。
初心者特典で3000SPがついてきますので色々試してみてください。
それでは素敵な魔法ライフをお楽しみください。」

俺はあまりの現実離れした状況に、夢を見ているのかとすんなりと納得する。
現実ならこんなかわいい女の子とはとてもじゃないが、緊張して話すことなんて出来なかっただろう。
夢の中でなら・・・と割り切ったら普通に楽しく会話することが出来た。

「まぁ、急に色々言われても信じられないと思いますから、私が実際に使ってみせますね。」
少女はポケットをごそごそすると先ほど俺に渡されたのと同じような端末を取り出した。
端末を手に持つと、いたずらっぽい笑みを浮かべてこちらを見て一言呟いた。
「ちっちゃくなぁ~れ! ミニマム~」
端末の画面に魔法陣(?)が浮かび上がったかと思ったら俺以外の世界が急に膨張し始めたのだ。

目の前には彼女の2本の脚が巨大な柱の様にそびえたっている。
見上げると、そこには彼女のスカートの中身が丸見えになっていた。
黒色でレースの付いた光沢のあるショーツがとても色っぽい。
思わず見とれてしまい、前かがみである。

ピコン! スピリチュアルエナジーを検出しました。ポイントに変換します。
彼女の端末から音声が聞こえてきた。
「そして、SPのチャージ方法についてですが・・・。」
彼女はしゃがみ込むと足元の俺に声をかけてくる。
・・・大事な所がどアップで目の前にある。
ショーツが食い込んでスジが丸わかりである。

「スピリチュアルエナジーって言うのはですね、人々の様々な感情が高ぶった時に溢れ出す目に見えない精神的なエナジーになります。
その溢れ出たエナジーを先ほどお渡ししたマジカロイド端末で吸収・変換する事によってポイントにチャージすることが出来るのです。
怒りや悲しみ、色欲といったような感情の高まりですね。あと色欲とか。」

なぜ2回言ったし。
すると彼女は股間を俺の目の前すれすれに突き出してM字開脚の様なポーズを取ると片手でスジの上を軽くなぞり始めた。
手を伸ばせばすぐに届く距離にある彼女の下腹部から発せられる甘酸っぱい体臭と熱気が鼻腔を刺激し、激しく興奮を掻き立てる。

ピコン!! スピリチュアルエナジーを検出しました。ポイントに変換します。
「あらあら、とても興奮されているのですね。SPご馳走様です♪
でも業務時間中なのでお触りはNGですよ?」

あー、この人アレだよ!魔法使いという名の変態だよ!!

「それじゃ、取説みてもわからなかったらサポートにメールくださいね。
個人的に手取り足取り教えてあげても良いですよ?ウフフフフ♪」
そう言うとキノさんは再びモニターの中へと戻って行ったのだった。

「あっ、ちょ・・・大きさを元に戻してー!!」

───────────翌朝
何かとてもHで変な夢を見た気がする。
って夢じゃないのかよ!!
俺は目の前にあるマジカロイド端末と取説を眺めながら昨夜の事を思い出す。
端末には彼女の連絡先とセクシーショットの写真が添付されていた。