異能の世界

───ここはごく普通の平凡な世界。
ただ一つ異なるのは一人一つの異能を持つこと。

「んじゃ浩太、先に帰るわ。またな~。」
そう言うと友人の輝樹は瞬く間に姿を消した。
文字通り、目の前から急に姿を消したのだ。
輝樹の異能は瞬間移動だ。
異能の内容についてはあまり公には公開することはない。
家族やかなり近しい友人程度に限られる。
それは犯罪に巻き込まれたりしないように自己防衛のためでもある。
生まれた時から一人一つの異能を持って生まれてくるのだ。
だが生活に役立つ便利な異能も有ればゴミみたいな異能もある。
俺は後者だ。
「はぁ・・・俺ももうちょっとまともな異能だったらなぁ。」
深いため息を吐いて、俺は教室を後にする。

喉が渇いたので校内の自販機でジュースを買おうと小銭を財布から取り出していると、手を滑らせて100円玉が自販機の下に入り込んでしまった。
「あぁぁぁ!もう!」
俺は辺りを見回して誰も居ないことを確認するとめったに使うことの無い異能を発動させる。
ぎゅ~~~~~~~ん!!
急激に世界が伸びて広がっていく。
いや、俺が小さくなったのだ。
俺の異能は触れた物を小さくすることが出来るのだ。自分自身を含めて。
自販機の下に入り込んで先ほど落とした硬貨を見つける。
自分の体重と変わらない硬貨を動かすのも一苦労だ。
俺が手間取っていると、廊下の向こうから人の気配が近づいてきた。
自販機の下から様子を探るとなんと、生徒会長の橘さんだった。
かなり美人でスタイルもよく、男子生徒に絶大な人気を誇っていた。
橘さんが硬貨を投入しボタンを押して、飲み物を取り出し口から取ろうとしゃがみ込む。
俺はそれを自販機したから故意ではないが、ガン見してしまった。
純白のパンツが眩しい。パンツの皺までくっきり見えた。
橘さんはジュースを取り出すと、すぐに小走りで立ち去って行った。
「はぁ・・・俺の異能も実は悪いものじゃないのかもしれないな。」
その時、俺は気づかなかった。
立ち去る彼女が廊下の角を曲がるときに顔を赤らめてこっちを振り返っていたことを。
そして俺はまだ彼女の異能を知らなかった。

───後日
「あぁ~、今日も授業つかれたぁ~~~。」
教室を出て下駄箱に向かう途中で生徒会長とすれ違った。
頭の中にこの前の景色が鮮明に蘇る。
「(橘さん、ごめんなさい!ごめんなさい!この前パンツを覗いてしまったのは決してワザとじゃなかったんです!!でもお世話になりました!!)」
俺は罪悪感からか、心の中でパンツを見てしまったことをしきりに謝っていた。
すると、通り過ぎた橘さんがクルリとUターンして俺に声を掛けてきた。
「えっと、皆元君だっけ?これから時間ある?」
俺は突然の事でびっくりしたが、二つ返事でうなずいていた。
橘さんの後をついていくと生徒会室へと入っていった。
そこには誰も居らず、二人だけだ。
何故か橘さんは入口のカギをかけていた。

「ねぇ、皆元君。あのね、この間の事なんだけど?」
「橘さん、ごめんなさい!決してワザとじゃなかったんです!!」
俺は罪悪感からつい咄嗟に謝ってしまっていた。パンツ覗いたことがバレてもいないのに。
「ん~~~?いったい何の事かなぁ~??」
なんだろう、この全てを知っていて見透かされているような感じは。
そこで俺は自分の異能とあの日の事を正直に話し、改めて謝罪した。
「うん、正直者だから許します。」
そこにはニッコリとほほ笑む橘さんがいた。
すると橘さんは普通は人には話さない自分の異能について話してくれた。
生徒会長の異能は人の心の声を聴くことが出来る異能だった。
「私ね、自分の異能の事は絶対に人に話さない様にしてるのよ。人の心の中なんて裏表がありすぎて絶対にわからない方が幸せだもの。」
しばらく続く沈黙。
「でもね、何となく君になら話してもいいかなぁ~って。ねぇ、私と友達にならない?」
「ええっ?俺と友達にですか?そりゃ嬉しいですけど。」
「よかった~。この異能の事を知るとね、皆気持ち悪がって私の側から離れて行っちゃうのよ。」
「橘さん苦労してるんだね。」
「じゃあ、今日から私たち友達ね?」
いつも遠くから見ていた凛とした生徒会長とは違ってとても新鮮だった。
そしてその日から俺たちはちょくちょく一緒に遊ぶようになったのだった。

その日も橘さんと取り留めもない話をしていたらプリンの話になった。
「ねぇ、浩太君。私ね、一度でいいからプリンのプールで泳いでみたかったの。」
「あー、あれか。やったことあるけど全身ベチャベチャして気持ち悪くて後悔したわ。」
「えー、ずるい!私もやってみたい!!」
そんなこんなで橘さんの家でプリンプールをすることになったのだった。
ちなみに橘さんの家族は今日は出払っている。
「じゃじゃ~ん!どう?似合う?」
橘さんの水着姿がまぶしい。
俺は声も出さずに、コクコクと頷くだけだった。

橘さんの部屋のテーブルの上に蓋の開けられたプリンが一つ。
「それじゃ小さくするよ。」
俺は橘さんの手を取ると異能を発動する。
グングンと小さくなっていく橘さん。
あっと言う間に3センチ程に縮んでいく。
「うわぁ~~~!すっごーい!!」
「はいはい、橘さん。準備運動は大丈夫?それじゃスプーンに乗ってね。」
俺が差し出したスプーンの上にチョコンと座ってキョロキョロしている橘さんはとっても可愛かった。
彼女を載せたスプーンをプリンの上まで持っていくと、彼女はそのままプリンにダイブした。
泳いだり食べたりとプリンのプールを十分満喫したようだった。
「うわぁ・・・べとべとで気持ち悪い~~~。」
「だから言ったじゃん。」
「ちょっとシャワー浴びてくるから待っててくれる?」
そう言うと元の大きさに戻った橘さんは俺を彼女の部屋に一人残してお風呂に行ってしまった。
女の子の部屋にぽつんと一人で待っている。
そわそわして落ち着かない俺。
橘さんのいい匂いがするような気がする。
俺は彼女のベッドに飛び込んだり、タンスを漁ったりなどしない!なんたって紳士だからだっ!
彼女の部屋で悶々とよからぬ妄想をしながら時間をつぶしているとタンクトップにホットパンツという刺激的な恰好の彼女が戻ってきた。
俺はついつい彼女の結構大きい二つの双丘に目を向けてしまうのだった。
「待っている間に変な事はしてなかったみたいだね、よしよし。ちょっと視線がエッチぃけど。」
「あっ・・・ごめん。その・・・橘さんが魅力的だったからつい・・・。」
「まぁ、男の子なんてみんなエッチよね。心の中では揉みまくりたいとか好き勝手言っちゃってるのに、表面では紳士ぶっちゃってさ。」
「あっ、はい。ごめんなさい。俺もおもいっきり思ってました。」
「でも浩太君は表裏ないから一緒にいて楽よ。今日は私の夢を一つ叶えてくれたから何かお礼してあげよっか?」
そう言われて俺はついつい頭の中にイケない事を考えてしまっていた。
この異能でいつかは叶えたい夢があったのだ。女の子のおっぱいに挟まれて揉みしだかれたいという夢が。
おっと、いかんいかん。彼女は心が読めるのだ。俺の考えていることが筒抜けなのだ。
俺は開き直って聞いてみた。
「駄目・・・?」
「・・・いいよ。」
彼女は顔を赤くしながらボソッと呟いた。

俺は3センチ程に小さくなった。
テーブルの上で服を脱ぎ棄てると真っ裸で正座し、ワクテカしながら待っていた。
あっ・・・やばい。待ってるだけで興奮して立ってきた。
彼女は俺の身体を優しく持ち上げるとそっと自分の胸元へと俺を運んでいく。
エレベータの様なGが俺の身体に掛かる。
目の前に迫る彼女の大きなおっぱい。
もう少しで彼女に触れようかという所で彼女の身体からボディーソープの香りと彼女の身体から発せられる熱気が伝わってきた。
俺は橘さんの胸の谷間に優しく降ろされる。
むにゅん。
「柔らかくて、温かくて、最高だよ、橘さん。」
「こ、こうかな?」
むにゅん、むにゅん。むぎゅ~~~!!
彼女は自分のおっぱいに手を添えると両側から揉みしだいてきたのだ。
両側から柔らかい塊が俺の身体を押しつぶしてくる。
うぷっ・・・うぷぷぷっ!!
うぉぉぉぉ!おっぱいで溺れる!!橘さんのおっぱいで溺死する~~~!!
「あっ・・・ごめんなさい、苦しかったでしょ?」
「ああ、だっ大丈夫、最高だったよ!橘さん!!」
その時俺は見てしまった。
薄っすらと汗ばんだ橘さんのおっぱいの先っちょが膨らんできていることに。
そして、それを見てしまったことを彼女に覚られたのだ。
「べ、別に女の子だってエッチな事くらい考えるんだからっ!」
その時彼女の手が緩んで俺の身体を支える力が弱まったのだ。
俺は彼女のおっぱいの谷間から落下してしまったのだ。
「うわぁぁぁぁ!!」
流石にこの高さから床に叩きつけられたら大怪我は免れない。
俺はスローモーションで流れる景色の中、大怪我を覚悟する。
・・・が、思ったほどの衝撃は来なかった。
「皆元君!!って・・・きゃっぁぁぁぁ!!」
辺りが薄暗くなったかと思うと、彼女の大きな悲鳴と何やら濃厚な香りそして未知の柔らかい感触がする。
俺は橘さんのお腹の上を滑り落ちて、なんとそのまま彼女のパンツの中へとダイブしてしまったのだ。
「あああ、橘さん!ごめんなさい!いっ・・・今すぐ出るから!」
俺の身体は丁度橘さんのパンツの中の大きな割れ目に挟まっていた。
急いでそこから抜け出そうとするのだが、慌ててしあまって上手く出られないのだ。
橘さんが俺を取り出そうとパンツの中に手を突っ込んできて、慌てて俺を摘まもうとするのだが気が動転していてなかなか摘まめないのだ。
逆に俺をそこに押し込んでしまう結果となってしまっていた。
「うそっ・・・やだっ・・・奥に入っちゃった!?」
俺は今、橘さんの中にいる。
俺の事を取り出そうと慌てた橘さんの指で逆に奥深くへとグイグイと押し込まれてしまったのだ。
「皆元君・・・大丈夫?苦しくない?あの・・・その・・・・・臭くない?」
臭いを気にする辺りがやっぱり女の子だよね。
「た、橘さん、落ち着いて!大丈夫だから!臭くないし・・・その、なんというかいい匂いだからっ!!」
俺の身体を彼女がやさしく包み込んでいるのだ。
「皆元君、自分で出てこれる?」
「もうちょっとここに居てもいいかな?」
「もう・・・!馬鹿な事言ってないでさっさと出てきなさい!」
俺は大変名残惜しかったが、しぶしぶそこから這い出したのだった。

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私は人の心の声が聞こえる異能を持っている。
人が心の中で思っている裏の声まで聞こえてしまって人間不信に陥っていた。
そんな中で彼に出会った。
彼は心の中で必死に謝っていた。
何を思ったのか、気が付くと私は彼に声を掛けていた。
それから二人で何度か一緒に遊んだりしたのだが、彼ほど表裏の無い人も珍しい。
人間不信だったが、彼は一緒に居ても安心することができる唯一の友人となった。
まぁ、ちょっぴりエッチなのは目をつぶろう。
男子はそんなもんだというのは嫌と言うほど心の声を聞いてきたのでよく知っている。
それにしてもちょっぴりサービスしてあげるだけのつもりだったのにどうしてこうなった!?
事故とは言え、小さくなった彼をあそこの奥深くに押し込んでしまったのだ。
臭かったらどうしよう・・・お風呂でちゃんと洗ったよね、私?
そんな事を考えていたら彼の心の声が聞こえてきた。
「(はぁぁぁぁ~~~ん、温かくて、柔らかくて、ヌルヌルして、いい匂いがして、ここは天国か!!)」
その声を聴いて私は冷静さを取り戻した。
「もう・・・馬鹿な事言ってないでさっさと出てきなさい!」

───夜
晩御飯を食べてお風呂に入り、布団に横になる。
そして今日起こった事を思い出して、また顔を赤くしている私がいる。
皆元君をあそこに入れてしまったのだ。
まだ彼の余韻を引きずっている。
指が自然と彼の居たところへと向かっていた。
「んっ・・・♪」

彼と顔を合わせづらくなってしまった。
「どうしよう・・・。」
どんな顔で彼と向き合えばいいのか分からなくなってしまったのだ。
それでいて、夜布団に入ると彼の感触を思い出して悶々として一人ふけってしまうのだ。
「あああ、私変態だ。自分のあそこの中に彼を押し込む妄想で興奮するとかどんな変態女だよ・・・。」
このままじゃダメだ、また彼と向き合えるように気持ちを切り替えていこう。そうだ、明日こそ彼に話しかけよう。
そんな矢先だった。
生徒会の仕事で一人残って作業していた所に彼がやってきたのだ。
彼の顔を見るだけで私の顔が赤くなる。
すると彼が話しかけてきた。表の声と心の声で。
「 橘さん!好きだっ!!また君と一つになりたい!!(橘さん!好きだっ!!また君と一つになりたい!!) 」
そうだった・・・。彼は表裏の無いちょっとエッチなこういう人だったんだ。私は何を悩んでいたんだろう。

「うふふ、いいわよ。でも暫く出してあげないんだからねっ!!」
その日、生徒会長はずっと悩んでいたのがまるで嘘の様に満面の笑みで下腹部を擦りながら一人(?)で家路につくのだった。