新しい職場に来てから数か月が経った。
もうすっかり初夏の陽気だ。
ハヤト君の一般の授業が終わった後、自室で二人きりで変身の授業をするのがいつもの日課だ。
「ハルカさん、今日はどんな練習するの?」
「ん~どうしよっか?苦手な物にでも挑戦してみましょうか?例えば大きい物とか。」
「え~~~無理だよ!」
「頑張ったら、ハヤト君のお願いを一つ聞いてあげようかな~♪」
前々から感じていたが、ハヤト君は目的があると上達が異様に早いのだ。
「うん!僕頑張る!!」
「それじゃ、まずは似てなくてもいいから大きく変身する所から初めて見よっか♪」
「はぁ・・・・疲れた~。」
「はーい、今日の授業はこれでおしまい!苦手な物に変身するのってとても疲れるでしょ?よく頑張ったわね。」
「うん。先生がお願い聞いてくれるって言うから頑張ったんだ~♪」
「そっかそっか。じゃあ今度は私が頑張ってハヤト君のお願い聞いちゃおっかなぁ。それでどんなお願いなの?」
「えっとね・・・。」
ハヤト君がモジモジしている。
大体こんな時はちょっとエッチな感じのお願いをする時だ。
うふふふ、今日もハヤト君かわいいなぁ。食べちゃいたいくらい・・・。
ああ・・・ダメよ私。あくまでこれは変身の練習!ハヤト君の変身の練習に付き合ってあげているだけなの!
そう自分に言い聞かせる。
「あのね、ハルカさんの中で一日中ずっと包まれていたいんだ・・・ダメかな?」
ハヤト君が上目使いで見上げてくる。
ズキューン!思わずハートを撃ち抜かれてしまった。
返事はもちろんOKだ。先生だもの、生徒の練習には付き合ってあげなきゃね。
食事とお風呂を済まして自室のベッドに下着姿で腰を掛ける。
受け入れ準備はバッチリだ。お風呂で入念に洗ったし臭くないよね?
「ハルカさん、それじゃ変身するね。」
「今日はいったい何に変身するのかなぁ?」
「今日はね、コレっ!」
ボワンッ!
ハヤト君の姿が消えて替わりにベッドの上に現れたのは・・・魚肉ソーセージ?
目の前で魚肉ソーセージが起き上がるとピョコンピョコンと飛び跳ねて膝の上に載ってきた。
「どう?上手く変身出来てるかな?」
「うん・・・とても美味しそうよ♪食べちゃおっかなぁ~。」
「あ~ん♪」
私はそれを手に取ると口元へ近づける。
「わっ、まって!食べないで!ハルカさん!!」
「うふふ、冗談よ♪ でも、あまり人前では食べ物には変身しない方が良いわよ。間違って食べられちゃうかもしれないし。」
私は舌を伸ばしてそれを舐める。
「うっ・・・ハルカさん、くすぐったいよ♪」
口に咥え傷をつけない様に優しく暫くチュパチュパっと舐め回す。
そして唾液でヌルヌルになった魚肉ソーセージを股の前に降ろすと穿いているショーツの股の部分を指でずらして秘部を露わにする。
「ほら、いらっしゃい♪」
すると魚肉ソーセージの姿のハヤト君が自分から身体をくねらせて私の割れ目へと潜り込もうとするんだけど、ツルツルと滑って上手く入れない様だ。
待ちきれなくなった私は指でそこを開いて導いてあげる。
ハヤト君が私の中を押し広げながらゆっくりと潜り込んでくる。
ヌチュ・・・ズリュッ・・・。
「んんっ・・・♪」
思わず声が漏れ出てしまう。
やがてすぐにその魚肉ソーセージ姿のハヤト君は私の中にすっぽりと完全に納まってしまった。
「ハルカさんの中、柔らかくて、温かくて・・・ハルカさんに守られてるって感じがしてすごく落ち着くんだ。」
お腹の中からハヤト君の声が聞こえてくる。
私は自分の下腹部を優しく撫でる。彼がとても愛おしい。
「私の中にハヤト君が入ってるのよね・・・。」
まさかこんな関係になるなんてこれっぽっちも思ってもみなかったのよね。
変身が苦手な彼を応援してあげたかっただけなのに。
それが今では魚肉ソーセージになって私の中って・・・色々育て方間違ったわね。
ちょっと不器用だけど努力家で真っすぐで優しい子で・・・それでいてエッチで・・・。
「あら、もうこんな時間なのね。それじゃハヤト君お休みなさい。」
私はそう言うと、ベッドに横になったのだった。
ただし悶々としてなかなか寝付けなかったハルカである。
━━━━━翌朝
「ん~~~ハヤト君おはよう~♪」
隣のハヤト君のベッドを見るとそこには彼の姿は無い。
「あっ、そっか・・・ここだったわね♪」
私は自分の下腹部に手を当てる。
「ハルカさん、おはよ~」
着替えるために立ち上がってクローゼットまで歩くが、ハヤト君が挟まっているので変な感じがする。
ナイトウェアから着替えると朝食を軽く済ませる。
昨日の夜はなかなか寝付けなくてちょっと睡眠不足気味だ。
眠気覚ましに大浴場にでも行こうかしら。
いつでも入れる大浴場完備とかほんと豪華よね・・・。
大浴場に行くと、既に先客がいるようだ。
脱衣所から浴場に入ると、そこにはハヤト君の同級生の有栖川さんと片桐先生の姿が見えた。
「有栖川さん、片桐先生、おはようございます。」
軽く会釈する。
「水谷先生、ごきげんよう。」
「おはようございます。」
身体を洗ってからお湯に浸かると有栖川さんが話しかけてきた。
「水谷先生少しよろしくて?」
「ええ、有栖川さん。どうかしましたか?」
「あの・・・ハヤト君の事について教えて欲しいのですが、彼って昔から変身がお上手でしたの?」
「全然そんな事なかったわよ。初めて会った時は変身が苦手でお友達からも馬鹿にされてたくらいよ。」
「うそっ!?あんなに変身すごく上手なのに?」
「彼は頑張り屋さんだからね。幼稚園終わってからも自分で変身の練習してたもの。それにきっと今も変身の練習してると思うわよ。」
私は自分の下腹部を眺めながらそう言ったのだった。
「そうでしたのね。私、彼の事を全然わかってませんでしたわ。私も負けない様に頑張らないといけませんわね。」
「それはそうと水谷先生・・・。」
「なんですか?片桐先生。」
片桐先生が私の顔をじぃ~っと眺めてくる。
「以前彼が変身する所を見せて貰いましてね。それで普段からどんな練習をしたらあんなに上手に変身できるのかなぁって・・・ショーツとか。」
「!?」
ん?今ショーツって言った?
聞き間違いじゃないよね?確かにショーツって言ったよね?
彼が下着に上手く変身出来る事をどうして知ってるの?
私の知らない所で彼女達の前でショーツに変身したって事よね?
今の言い方だと、私が彼をショーツに変身させて穿いてたりするんじゃないかって疑ってる?
いや、・・・まぁ大体そうなんだけど。
この二人は何処まで知ってるのよ、いったい。
汗が背中を流れ落ちる。
「えっと、私のファッション雑誌を見せてあげたりしてるだけなんですけどね。ハヤト君ってば向上心が凄いから彼にまかせっきりで私はちょっとアドバイスしてあげてるくらいかな?」
「そう・・・ですか。それならいいのですが。たまに衣服が乱れてたとか違和感があったりとか・・・いえ、やっぱり何でも無いです。」
あれ?ハヤト君がこっそり私の下着に変身して悪戯してるんじゃないかって疑ってたのかな?
ひょっとしてハヤト君ったら、やっぱり私の知らない所で彼女達に悪戯して見つかったのかしら?
これは色々と問い詰める必要が有るわね。
お風呂から上がって部屋に戻る。
彼に色々問い詰めたい事もあるけど、それは後でいいか。
「今度の臨海学校の下調べしておかないと。」
もうすぐ夏本番。
この学校では海の側の国有の療養所を借りて毎年臨海学校を行っている。
今年の準備委員に当たってしまっているのだ。
「え~っと、予定日はこの日からこの日でっと・・・バスは2台貸し切りで・・・。」
先生もなかなか大変なのである。
「んんっ~~~!」
大きく背伸びをする。
土曜日だと言うのに何だかんだでずっと仕事をしてしまった。
時計を見るともう外はすっかり暗くなっていた。
そろそろ彼の変身が解ける頃だ。
私は部屋のお風呂へと向かうと服を脱ぎ、裸で浴槽の縁に腰を掛ける。
「さてと、ハヤト君。そろそろ変身が解ける時間だから出てきて欲しいのだけれど。」
「えっ~やだっ!僕もっとここに居たいよ!」
「ほら、無茶言わないで出てきなさい!そこで変身解けちゃったら私もハヤト君も大変な事になっちゃうでしょ?」
うん、想像しただけでスプラッタな未来しか思い浮かばない。
私は中に指を差し入れてそれを摘まむと、丸一日ぶりに中から魚肉ソーセージを取り出したのだった。
それは既に乾いてカピカピだった。うん、やっぱりそうなるよね。
━━━━━ 一月後
今日は臨海学校で海の側の保養所に全校生徒で来ている。
小中高合わせても生徒が約30人、先生も約30人となっている。
自由時間も多く取られていて、食事やお風呂の時間以外はほぼ自由行動だった。
「ここの海岸は遠浅になっていますが、あまり遠くまで行かない様に。また、低学年の学級の子供たちには常に気にかけてあげてください。」
校長先生のありがたいお話の後、ご飯まで自由時間となった。
「おっ、お隣のハルカっちじゃないですか~?ちっすー」
お隣のキョウコさん達が話しかけてきた。
「やっぱりハルカっちはスタイルいいですねぇ~!ぐへへへっ、そそりますねぇ!」
「キョウコ、目がヤラシイ・・・。」
キョウコさんはとても人懐っこくて、それでいて言動がエロ親父みたい。
トモコさんは口数少な目のマイペースな感じの不思議ちゃんって感じだ。
「ハヤト君にはこのスレンダーなトモコお姉さんを貸してあげるから、二人でひと泳ぎして来たらどうですかね?
私はハルカっちとオイルの塗り合いっこしてるんで♪」
キョウコさんが両手を前に出して、おっぱいを揉むような指の動きをしている。
そんなこんなで僕はトモコさんと二人きりで沖の方まで来ていた。
足が付くのもこの辺までかな?
トモコさんはイルカの浮き輪に捕まって海を漂っている。やっぱりマイペースだ。
あ、波でひっくり返った!
そのあとなんだかキョロキョロと探し物をしてる。どうかしたのかな?
僕は浮き輪に捕まりながら、トモコさんの方へ泳いで近づいていったんだ。
「トモコさん、どうしたの?」
「少年、大事件!水着が流されちゃった・・・。」
よく見るとトモコさんは水着の下を穿いていなかった。
一緒にしばらく探してみたんだけど、まったく見当たらなかった。
「どうしよう?少年・・・これじゃ恥ずかしくて戻れない。」
「変身とかで誤魔化せないの?」
「私、そういう系の変身は苦手。」
「あの・・・もしトモコさんが良かったらの話なんだけど、僕が水着に変身しよっか?」
「おー、少年!ナイスアイデア!」
あっさりとOKしたけど、トモコさんは僕を穿くのに抵抗ないのかな・・・?
僕は水着に変身するとトモコさんにあっさりと穿かれたのだった。
スラッとした身体に結構攻めた黒のビキニで目のやり場に困るくらいだったんだけど、まさか僕が彼女の水着になるとは思ってもなかったよ。
海水で濡れてぴったりと彼女の肌に張り付くし、バタ足するものだからお尻には食い込むし。こっちが恥ずかしくなってくるくらいだよ。
トモコさんはイルカの浮き輪に捕まって岸に向かってバタ足してるんだけどなんだか一向に岸に近づかない。もしろ岸から離れていく。
気が付いたころには岸が見えないくらいの所まで流されてしまっていた。
「少年・・・これは大事件!」
あーこれ、だめな奴だ。離岸流とかいうやつ。
「一回横に向かって泳ぐと良いってテレビでやってたよ。」
何とか離岸流からは脱出したものの、かなり沖まで流されてしまって漂流中だ。
「あそこに小さい島があるから、そこで助けをまったらどうかな?」
トモコさんはコクコクと頷いた。
どうやらその島は小さな無人島の様で小さな掘っ立て小屋が有るくらいだった。
トモコさんは疲れたのかフラフラとした足取りで掘っ立て小屋に到着すると、そこでパタリと倒れ込んでしまった。
「大丈夫?トモコさん!」
僕は慌てて変身を解くと、彼女の様子を伺う。
肩で大きく息をしていて、体温が高いみたい。
「熱中症かな?陰で休んで良くなればいいんだけど。何か身体を冷やす物ないかな?」
そうだ!いい事を思いついた!僕自身が水になって彼女を冷やしてあげればいいんだ。
「今冷やしてあげるからちょっと待ってね。」
そう言うと僕は水の塊に変身して彼女の身体を包み込んだのだった。
僕が水に変身するのを見たトモコさんはかなりビックリしたみたいだけど、気持ちよくなったのが目を閉じて眠ってしまった。
しばらくそうしていたら、先ほどに比べれば大分呼吸も落ち着いてきた。
さて、後は助けが来てくれるといいんだけど、何か助けを呼ぶ方法ないかな?
トモコさんの様子が落ち着いたので、僕は変身を解いて海岸を探索する。
とりあえず、SOSっと。
砂浜に大きく文字を書いてみる。
あとは・・・そうだ!狼煙だ!
燃えそうな流木とかを集めて火を付ける。
この間理科の実験で虫眼鏡で紙に火を付ける実験をしたところだったんだよね。
僕は右手を虫眼鏡へと変身させた。
いつもはこういう部分的な変身って全然出来ないんだけど、トモコさんを助けなきゃって思ったらなんか出来ちゃったよ。
変身するのに気持ちも大事なのよって以前にハルカさんが話してた意味が何となく分かった。
暫く時間がかかったものの、何とか火を付ける事が出来た。
その後は草を集めて火にくべると、モクモクと灰色の煙が空へと立ち上る。
これできっと誰か助けに来てくれるよ。
後は水分補給が出来ればいいんだけど、さすがに飲み水は無いかな。
海岸に打ち上げられたペットボトルくらいしか見つからなかった。
役に立たないかもしれないけれど、僕はそれを拾うと海水で綺麗に洗いトモコさんの元へと戻ったのだった。
トモコさんは目を覚ましていたようで、僕に声を掛けてきた。
「少年・・・ゴメンね。」
僕を巻き込んでしまった事に責任を感じているのかな?
「もうすぐきっと助けが来てくれるから大丈夫だよ。」
トモコさんはそう言うとまた眠りについてしまった。
掘っ立て小屋の中でぼぉ~っと助けを待つ。
トモコさんは脱水症状でやっぱり苦しそうだ。
そんな時、空に大きな影が見えた。
「鳥?飛行機?」
「キョウコちゃんだよ~~~!」
それは鳥に変身したキョウコさんだった!助けに来てくれたんだ!!
嘴には海で失くしたトモコさんの水着が咥えられてる。
「あっ、それ見つけたんだ・・・。」
僕たちの姿が見えなくて心配して探してたらトモコさんの水着を見つけて空から僕たちを探してくれたんだって。
「あの狼煙はハヤト君が?」
「うん、見つけてくれてありがとう。」
「グッジョブだよ。」
「それじゃ私は助けを呼びに戻るから、このままトモコの事を見てて上げて。」
「あ、待って!キョウコさん!トモコさんの脱水症状がひどいんだ。それで僕が変身して水になるからトモコさんに飲ませてあげて欲しいんだ。」
ポカーンとした顔のキョウコさん。
「えっ?水?」
まぁ、そうなるよね。
「僕、水に変身出来るんだ。それで水になった僕をトモコさんに飲ませてあげて欲しいの。」
「ちょっとまってよ、ハヤト君。水に変身出来るのもビックリなんだけど、君、飲まれちゃってその後大丈夫なの?」
「丸一日くらいは変身出来るから、それまでにトモコさんの中から脱出すれば多分大丈夫だと思う。」
「まぁ、大丈夫ならお願いしたいけど・・・。」
「それでですね・・・その・・・モニョモニョ。」
僕はキョウコさんに一つだけお願いを伝えた後で水へと変身したのだった。
さっき拾ってきたペットボトルが役に立ったよ。
「ほら、トモコ起きて~!美味しい美味しいお水だよ~~~」
キョウコさんはトモコさんの身体を起こすと、僕が入ったペットボトルを朦朧としたトモコさんの口へと添える。
ゴクリゴクリと飲み干していく。
僕の身体はトモコさんの真っ暗な喉の奥へと流れ込んでいき、彼女の胃の中へとすっぽりと納まったのだった。
「さて、はやく吸収されないとダメだから先を急ごう。」
僕は胃を通り抜けて小腸へと向かった。
小腸の細かなヒダヒダが僕の身体を少しずつ少しずつ取り込んでいく。
僕の身体は散り散りになってトモコさんの身体の中を駆け巡る。
それに伴い僕の意識は薄れく。
水に落としたインクが広がって均質に混ざり合うかの様に、僕の意識はトモコさんの身体の中へと拡散し、ついには意識を保てなくなってしまったのだ。
「やばい・・・これ・・・・・ダメなやつかも・・・・・。」
それからしばらくしてキョウコさんが救助を連れて戻ってきてくれた。
「トモコ!ハヤト君!大丈夫?」
そこで僕はハッとして意識を取り戻したんだ。
トモコさんの身体に取り込まれて散り散りになって意識を失ってしまったけれど、時間が経つにつれて僕の身体は膀胱に集められ意識を取り戻せたみたい。
今回は流石に危なかったかも。
「キョウコさん、僕は無事だよ~。例の件よろしくね~」
「ハヤト君も無事みたいね。よかった・・・。」
トモコの下腹部から聞こえてくる声に安堵するキョウコであった。
療養所のベッドの上。
眠っていたトモコさんが漸く目を覚ましたようだ。
「良かった・・・トモコ。心配したのよ!」
「キョウコが見つけてくれたんだね。アリガト。」
「見つけたのは私だけど、見つけられたのも全部ハヤト君のお陰だよ。脱水症状もハヤト君がいなかったらかなりやばかったんだから!」
それを聞いてトモコは回りを見回すが彼の姿はそこにはない。
「少年は・・・ドコ?」
トモコさんは水になった僕を飲まされた事に気づいていなかったんだね。
「あのね、トモコ。とても言い難いんだけども・・・ハヤト君は・・・あなたを助けるために・・・・・ううっ。」
沈黙が部屋に広がる。
あまり感情を表に表さないトモコだったが、この時ばかりは慌てた表情を浮かべる。
「彼は無事なの?生きてるわよね!?」
「その・・・無事は無事なんだけど・・・あのね・・・。」
キョウコがトモコの耳元でひそひそと呟く。
「うそっ!?」
「ううん、嘘じゃないのよ。今ハヤト君は・・・この中よ。」
トモコの下腹部を指さす。
「あっ、トモコさん。目が覚めたんだね、無事で良かったよ。」
トモコの膀胱の中からハヤトの陽気な声が響いたのだった。
「はい、じゃあこれにハヤト君を出してきてあげてね♪」
キョウコはトモコに空のペットボトルを笑顔で手渡した。
これがキョウコさんにお願いした件だ。トイレに流されたら帰ってこれなくなっちゃうからね。
自分の危険を顧みずに水に変身して私を助けてくれた少年には感謝しかない。
「うん、ちょっと待ってて。私の囚われの王子様。今すぐそこからあなたを助け出してみせるわ!」
「超うける・・・おしっこするだけじゃんw」
トモコはトイレに向かうと、ショーツを降ろして便座に腰掛ける。
そして手渡されたペットボトルを尿道へとあてがった。
「ねぇ・・少年・・・いや、ハヤト君。」
「なぁに?お姉ちゃん?」
「本当に私の中に居るんだね。なんだろう、出してあげたいんだけど、このままずっと出してあげたくないような不思議な気持ち。」
「意地悪言わないで出してよ~それなら無理やり出ちゃうんだからね!」
トモコの身体が激しい尿意にブルブルと震える。
無理やり尿道を通ってハヤトが外に出ようとしているのだ。
やがて我慢しきれなくなり、ついには決壊する。
黄金色の液体がジャーーーーっと音を立てて勢いよく溢れ出す。
すぐにペットボトルは僕でいっぱいになった。
何やら名残惜しそうにそのペットボトルを眺めるトモコであった。
トイレから帰ってきたトモコの手には黄金色の液体が入ったペットボトルが大事そうに握られていた。
「やっぱり未だに信じられないんだけど、これ本当にハヤト君なんだよね?」
「うん、僕だよ。それじゃ元に戻るね。」
そう言って僕はペットボトルから身を乗り出すと、変身を解除して元の姿へと戻ったのだった。
「うわっ、おしっこ臭っ!」
どうやら僕の身体に彼女の本物のおしっこも混じってたみたい。
━━━━━数日後
「へ~。姿が見えないと思ってたら、私がいない所でそんな事があったんだ~!ふ~ん。」
何だか不満そうなハルカさん。
ひょっとして、ヤキモチやいてくれてるのかな?
「ハルカさんも僕の事飲んでみたいとか思ってる・・・?」
「うふふ、ハヤト君と一つになるってのはちょっと憧れるかもね。でも危ない事はダメかな。」
僕をぎゅ~っと優しく抱きしめてくれる。
「ハルカさんになら飲まれても良いよ。どうせ時間が経てば自然と膀胱に集まって意識も戻るし、そこまでは危険じゃないと思う。」
「へ、へー、あー、そうなんだー」
ハルカさんが、ゴクリと唾を飲む。
なんだかハルカさんは嬉しそうな顔をしているところを見るとやっぱり飲んでみたかったんだね。
「それじゃ、今日の夜早速ハヤト君を頂いちゃおうかな♪(物理的な意味で)」
夜。
テーブルの上に出されたワイングラスをハルカさんがニコニコと眺めている。
「それじゃ変身するね。」
僕は水に変身するとワイングラスの中へと納まった。
「本当に飲んじゃっても大丈夫なんだよね?」
「うん。でも明日の朝くらいには膀胱に居ると思うから、間違ってもトイレにだけは流さないでね。」
「それじゃ頂きます♪」
そう言うとハルカさんはワイングラスを手に取り口を付ける。
僕の身体は一口、ハルカさんの口の中へと取り込まれる。
ハルカさんの口の中が温かい。舌が僕を味わう様に動き唾液と交じり合った後、ゴクリと飲み込まれる。
恍惚の表情で僕を飲み込むハルカさんをワイングラスの中の僕が眺めていた。
やがて残りの僕も全部ハルカさんの中へと全て消えていったのだった。
しばらく胃の中に留まった後、僕は流れに身を任せ少しずつ小腸へ押し出されていった。
僕の身体が少しずつハルカさんの中へ取り込まれていく。
僕と言う存在が一時的とは言え、ハルカさんの中に溶け込んでいくのだ。
意識が少しずつ薄れていくが、特に恐怖は感じなかった。
だって、これから大好きなハルカさんと一つになるんだもの。
「ここは・・・どこだっけ?」
あれから何時間が経過したのか全然わからない。
水を飲んでから尿になるまで3~6時間くらいらしいけど、どうなんだろう。
徐々に尿として膀胱に身体が集まったことで意識がはっきりと戻ってきた。
そうだ、僕はハルカさんの身体の中にいるんだった。
水分としてハルカさんの腸で吸収されて身体の中を駆け巡った後、ここに辿り着いたんだ。
僕は自分の身体が全て集まったことを確認する。
うん、これでいつでも元に戻れるや。
あとはハルカさんにここから出してもらうだけだ。
最悪の場合、無理やりにでも脱出すればいいしね。
暫くしてハルカさんが目を覚ました様だ。
僕のいる小部屋が揺れて、僕の身体が大きく波打つ。
「ん~~~良く寝た。なんだかすごく良い夢を見ていた気がするわ。」
ハルカさんは起き上がると歩き始めた様だ。
ガチャリ。
ドアが閉まるような音がハルカさんの身体越しに聞こえてきた。
なんだか、嫌な予感がする。
すると僕がいる部屋の壁が急に収縮して圧力が高まったかと思うと、閉まっていた出口の所が緩まり勢いよくハルカさんの外へと押し出され始める。
「あっ、ちょっと待ってよ!ハルカさ~ん!!」
シャァァァァァァー!!
僕の身体はすごい勢いで白い壁へと叩きつけられる。
上を見上げるとハルカさんのお尻が見え、彼女の中に残った僕の身体も絶賛放出中だ。
ハルカさんったら寝ぼけて僕をトイレで出しちゃったんだ!!
このままだと流されて下水道にまで行っちゃうよ!
「ハルカさん!僕ここだよ!流さないで!!」
声を掛けたんだけど、おしっこの音が凄くて聞こえないみたい。
トイレットペーパーをカラカラと取ってさっと拭き取ると、便器の中へポイッと落としてレバーに手を掛ける。
僕は慌ててその場で変身を解いたんだ。
結果的には流されずには済んだよ?でも散々な結果だった。
狭い便器の中で元の姿に戻ったものだから、まず上に座ってたハルカさんのお尻に勢いよく頭をぶつける。
ハルカさんはと言うと急にお尻を押されてたものだから、その勢いでドアに頭から突っ込んでお尻丸出しで倒れちゃった。
僕もトイレの水とハルカさんのおしっこでずぶ濡れだし、本当にひどい有様だった。
今思えば、おしっこだけだったからマシだったのかもしれない。
頭にたん瘤を作ったハルカさんに平謝りされて終わったんだけど、それ以降は僕の事を飲んでみたいとは二度と言われなくなった。
翌年、水谷先生の提出した論文は再び研究者たちに大きな衝撃を与える事になる。
『液体への変身と意識への影響ついて』