「はい、みなさ~ん!宿題はやってきましたか?」
「「「は~い!」」」
子供たちが元気よく答える。
そんな中に一人だけ下を向いて暗い表情の幼稚園児が一人。
それが僕だ。
ここは幼稚園。
幼稚園と言っても普通の幼稚園ではない。
たまに生まれてくる変身と言う特殊な能力を持った幼い子供たちを集め、変身という能力を伸ばすための変身幼稚園なのだ。
将来能力を悪用しないように子供たちを健全に育て、その能力をより伸ばして国家のために役立てるのを目的とした施設なのだ。
そんな訳で世間一般には秘密とされている。
「あれ~?ハヤト君。どうしたのかな?宿題難しかったかな?」
声を掛けてきたのは水谷先生だ。
変身幼稚園の教員になったばかりのまだ経験の浅い若い女の先生である。
「似てなくてもいいから、変身してみよっか?」
「は、はい。先生。」
ボワンッ!!
僕は幼稚園児の姿から課題で出た”好きな動物”へと変身したのだが、そこに現れたのはライオンとは似ても似つかない訳の分からない何かであった。
「「「わははははは!」」」
変身したとたん教室に笑い声が上がる。
「うわー、ハヤト君。なにそれー」
「全然にてな~い!」
「こらー、みんな!笑っちゃいけません!!ハヤト君も一生懸命なんだから!!」
「「「は~い。」」」
ボワンッ!!
そして1分と経たずに元の姿へと戻ってしまった。
そっくりに変身するのも難しいのだが、長時間変身するのも集中力が必要で同じくらい難しいのだ。
一般的な幼稚園児だと10分くらいだろうか。
鍛え上げられた変身のプロでも半日がいいところだ。
「もう終わり~?みじか~い!」
他の園児たちから馬鹿にされる。
う~ん、なんで僕は上手く変身出来ないんだろう。
「それじゃみんなも好きな動物に変身してね~♪」
「「「は~い!」」」
ボワン!ボワワン!!
教室の中には犬、猫、鳥と様々な動物で溢れかえった。
ちょっとおかしな点と言えば、大きさくらいだろうか。
姿は似ていても大きさは実物とはかなりかけ離れている。
元の大きさから極端にかけ離れた物への変身は非常に難しく、熟練の変身能力者でも子猫程度の大きさが限界だったのだ。
「わ~、みんなすっごく上手!そっくりよ!」
変身してから10分も経つと、次々とみんなの変身が解けて全員元の姿へと戻っていた。
このクラスで上手く変身できない落ちこぼれは僕だけみたい。
そして今日も一日が終わり、退園時間となった。
「それじゃ皆、また明日ね~♪」
みんなパパやママのお迎えで次々と帰っていく。
僕のお迎えはまだみたい。
「あら?今日はハヤト君のお迎え遅いのね。」
水谷先生が話しかけてくる。
「それじゃお迎えが來るまで先生と変身の練習しよっか?」
「う、うん。」
大好きな水谷先生との二人きりの時間である。
「あのね・・・先生。どうやったらみんなみたいに上手に変身できるようになれるかな?」
僕は先生の顔を見上げながら聞いてみたんだ。
「う~ん、そうね。例えばハヤト君が一番なりたい物に変身してみるとかどうかな?
変身したいって気持ちが大事なのよ。あとは良く観察することかな?」
先生が笑顔で答えてくれる。
「うん!わかった!」
僕は幼いながらにこう思ったんだ。
──────大好きな先生をもっと綺麗にしてあげたいな。
ボワンッ!
大きな雑巾の様な姿に変身した僕に先生が話しかけてくる。
「えっと・・・ハヤト君、これは?」
「僕ね、素敵なお洋服に変身して先生をもっと綺麗にしてあげるの!」
「そっか~。ありがとね♪ それじゃ、いっぱい練習して素敵なお洋服に変身して先生を綺麗にしてね♪」
水谷先生は不格好に変身した僕を笑顔で抱きしめてくれたのだった。
そしてその日僕は初めて心から上手に変身したいって思ったんだ。
家に帰るとママの服やファッション雑誌をこっそりと借りては自分の部屋に持っていき、水谷先生に着てもらう事を思い浮かべながら毎日特訓を繰り返したんだ。
時は過ぎ、あの日から既に数か月が経過していた。
目的意識があると成長するものである。
既にあの雑巾の様な不格好な姿はそこには無く、本物と区別がつかない程の普通の服がそこには有った。
相変わらず動物とかに変身するのは苦手だけど、服に変身するのだけは他の誰にも負けない自信があった。
でも先生の服になりたかったから練習したって言うと、みんなに馬鹿にされそうだったので黙ってる事にしたんだ。
あれから先生と二人きりになる機会はなかなか無かったんだけど、今日はママのお迎えが遅くなるみたいで一番最後だったんだ。
「あ、ハヤト君。お家の方から連絡が有ってお迎え少し遅れるって。遊戯室でちょっと遊んで待ってよっか♪」
「うん!」
「あれから変身の練習してる?先生ずっと楽しみに待ってるのよ♪」
「えへへ、僕頑張ってるよ!」
僕は先生の着ているトレーナーをまじまじと眺めると変身してみる。
ボワンッ!
そこには先生が着ている物とまったく同じトレーナーが有った。
「えっ!嘘っ!?」
水谷先生はビックリした顔で服に変身した僕を持ち上げると僕の事をじっと眺めてくる。
指先で僕の身体を触っては感触を確かめてくる。
先生の指先がくすぐったい。
「ほんとにハヤト君なの!?」
「うん、僕だよ。いっぱい練習したんだ!」
「すごいよ!ハヤト君!頑張ったんだね!!」
「えへへ、すごいでしょ?」
「あんなに変身が苦手だったハヤト君がこんなに上手に変身できる様になったなんて先生ビックリしちゃったよ♪
じゃあ先生、ヤハト君を着ちゃおっかな~?」
そう言うと、先生は着ていたトレーナーを脱いだんだ。
トレーナーの下のタンクトップが露わになる。
水谷先生のその姿を見るとなんだかいつもよりドキドキする。
「それじゃ着心地はどうかなぁ~?」
先生はからかうような表情で僕の中にスルスルと腕、頭、胴体と通していく。
憧れの水谷先生の身体が僕の中を通り抜けていく。
僕の身体が先生の上半身を包み込む。
先生の体温を感じる。
先生の良い匂いが染み込んでくる。
「あ・・・先生! 僕・・・もう・・・。」
ボワンッ
あまりの体験にあっと言う間に変身が解けてしまったのだ。
「あらあら、そっくりに変身できるようになったのに長い時間変身するのはまだ苦手みたいね♪」
「おっかしいなぁ、いつもならもう少し変身できるんだけどなぁ。」
憧れの水谷先生を身近に感じて集中力が切れてしまったのだ。
「次は長い間変身できるように特訓だね♪ きっと君は将来大物になるよ。」
そんなこんなでその日は終わったのだった。
────夜
布団の中で今日の出来事を悶々と思い出す。
トレーナーに変身した僕の身体が先生の身体を包み込んでいた。
先生の肌の感触、体温、匂いが頭から離れない。
あと胸の感触も。
細身の割に大きな胸の水谷先生の胸元はいつも窮屈そうだったけど、着られてみてよく分かった。
とてもボリュームが有ってはち切れんばかりだった。
少し早い性の目覚めである。
「もっと練習しなきゃ・・・。」
興奮して直ぐに変身が解けてしまったことを悔やみ、僕の意欲は増すのであった。